ハチクマ観察の前に



ハチクマ オス 成鳥   2013年5月20日(福岡県 風師山)



はじめに

ハチクマとは

ハチクマは春、日本へやってきて繁殖をし秋に越冬地の南へと旅立ち
通過するところでは春と秋の二回、眼にすることができます。

群れになって渡っていきますので迫力のある渡りを見せてくれますし
体も羽を広げると120cmから140cmくらいありますので
見ごたえがあります。

ハチクマが人気のヒミツはオス、メス、幼鳥としっかり識別できますし
羽の模様も千差万別、非常に興味深いものです。

繁殖地:中部地方、東北地方他
越冬地:東南アジア
エサ:スズメバチの幼虫や蛹など(地中に巣を作るスズメバチ)

渡りの経路について
2003年より衛星追跡システムを利用して調査されています
秋:繁殖地を旅立ったハチクマは中部地方を通過し近畿より瀬戸内海北岸を進み
  関門海峡を経て五島列島へ。その後、昼夜を問わず海上を飛び続け中国大陸を
  経て最終的には東南アジアに達します。
  一部は四国から五島列島に向かう個体も存在しますが幼鳥が多いようです。

  春:越冬地を旅立ったハチクマは中国大陸を北上し、なんと秋とは違う朝鮮半島から九州や山口県へ
  入ってきて、繁殖地へ向かいます。

飛び方

帆翔 (ソアリング)  上昇気流を捕まえて旋回しながら高度を稼ぐ飛び方

尾羽をいっぱいに広げて翼も持ち上げて上昇気流を捕まえます。
雌雄の識別が容易な時です。



滑翔 (グライデング)  高度を利用して羽ばたかずに流れるように前進する飛び方

やや翼が下がった状態で、尾羽も閉じていますので尾羽での雌雄の識別は難しい時もあります。



搏翔はくしょう(フラッピング) 上昇気流が少ない時や、風がない時などに羽ばたいて前進する飛び方

上昇気流が少ない時や風を利用できない時なので、当然高度は下がっています。


タカ柱

流れてきたハチクマは上昇気流を利用して次々に旋回しながら高く舞い上がる。
ハチクマ観察の醍醐味の一つで、数十羽も舞えば歓声が上がります。
ちなみにカラスではカラス柱、トビではトビ柱といいます。

この場面の撮影は難しく、通常は望遠レンズで撮影していますので
ズームレンズ付きのカメラが必要ですが、いざ持って行ってもこういう機会は
めったになく、持っていない時に、見事な柱が出現するものです。



ハチクマの群れ

帆翔して高度をかせいだハチクマは次から次に滑翔に入り
流れてきますので、この時にカウントを行います。

この場面の撮影は難しく、大きな群れの時くらいで数羽ずつ
縦に長く続くことが普通です。



翼、上面の模様の違い。

オスの上面の模様

尾羽に二本の広い帯があり、翼の後縁にも黒い帯が見られます。


メスの上面の模様

尾羽には細かい帯が見られるが、オスに比べてはるかに狭く目立たない
帯が目立たないメスもいる。




幼鳥の上面の模様

幼鳥は秋の渡りの時期にだけ見ることができ
秋に見る成鳥は換羽の途中のものが多いので羽が傷んだように見えます。

それに対し幼鳥は非常にきれいなものが多いので、それだけでも識別が容易です。
また、羽の先端が薄く黄色となっていて、それらが連続してラインに見えます。




翼、下面の模様の違い。

オスの下面の模様

尾羽に二本の広い帯があり、翼の後縁にも黒い帯が見られます。


メスの下面の模様

尾羽には細かい帯が見られるが、オスに比べてはるかに狭く目立たない
帯が目立たないメスもいる。

また、翼の先端(初列風切)が黒くつぶれているが幼鳥ほどではない


幼鳥の下面の模様

メスに似た感じで、きれいな個体が多く
遠くからでも、くちばしの付け根の黄色い部分(蝋膜)が良く目立つ。

また、翼の先端(初列風切)が黒くつぶれていてメスより顕著



頭部、目の色(虹彩)の違いを見る。

オスの頭部

グレーの顔で模様はない。
虹彩は濃い茶色
ただ、遠くからは黒に見える。

多くの人は優しい顔をしていると言う。


メスの頭部

模様が入っている。
虹彩は黄色。

多くの人はきつい顔をしていると言う。



幼鳥の頭部

くちばしの付け根の部分(蝋膜という)が鮮やかな黄色。
飛んでいても非常に目立つ。

虹彩は黄色。



渡り鳥衛星追跡

2012年にハチクマ渡り公開プロジェクトが開始されました。

4羽に9.5gの発信器を装着して衛星で追跡するもので、刻々と送られてくる情報で
全国のタカ好きの人たちは、この話でずいぶん盛り上がりました。

通過するハチクマを見ながら、どれがにアンテナが装着されているのではないかと
目を凝らしたものです。

アンテナは下からは見えませんし、遠くではほとんど点でしか見えないことも多いのです。
よほどの偶然が重ならないと見ることは困難で、ほぼ奇跡に近いことだと思います。


2012年9月28日 撮影

そろそろ来るころだと待ち構え目を凝らしています。

しかし4時30分も過ぎ、帰る支度をしようと思っていた矢先
対岸の下関市の火の山で観察しているFさんから、今、アンテナを背負った
ハチクマを見たという電話が入り張り切って待っていますと10分後に
4羽のハチクマが目線で飛んできました。

どれがそうかはわかりませんので、それぞれに撮影しますと最初のハチクマに
アンテナが装着されています。ほんとに幸運でした。

これもFさんが必死に双眼スコープで探していただいた賜物で
17時7分ではもう帰途についている頃です。
青森県黒石市で2012年6月20日に捕獲、放鳥された
クロ(おそらく)
9月19日に繁殖地を出発し9月28日に見られたので
青森県から北九州市まで9日間で飛んできたことになります。



2013年10月4日 撮影

いつものように、いつものところでタカを撮影していて
帰って画像を整理していると、アンテナを載せたハチクマが写っていました。

2年連続で見ることができるなんてダブルの奇跡で、私の運もこれで尽きてしまったようです。

青森県黒石市で2012年6月22日に捕獲、放鳥された
メスの成鳥  ナオ



 


体色のいろいろ





暗色型  



淡色型  あまり多くありません。



ハチクマの模様は千差万別で魅力の一つにもなっているほどで全く同じ模様はないのではないでしょうか?
そのため個体識別が可能で近くを飛ぶのであれば移動のもようもわかるはずです。



おわりに

  一度、大規模なハチクマの渡りを見てしまったら、間違いなくタカの魅力にはまってしまうのではないでしょうか。

上空を低く次から次へと現れる迫力は日常生活では味わえない興奮と驚きがあります。

長時間、遠くを見ていますので目も良くなるし、待っている間にストレッチでもやれば健康にもプラスでしょう。

このHPがそのきっかけになれば幸いです。




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