鳥旅 第8回 エトピリカ乗船記

三陸沖、根室沖クルーズ 2013.05.03より05.06


アホウドリ 亜成鳥

はじめに

Uさんより大洗より根室まで行く海鳥を見るツアーができたのとの話を聞き
その場で行く事に決めました。

名古屋から苫小牧までのフェリーは何度か経験しているのですが、北海道の南岸を航行しながら
納沙布岬を経て根室までのコースは海鳥ファンとしては垂涎の企画です。
フェリーと違い小さな船ですから鳥も近く、今までに経験したことのない興奮が味わえそうです。

ただ、カミさんは船の小ささに、船酔いのことばかり気になっているようです。

準備

装備:寒さと雨への準備で レインコート フリース 手袋  予備にダウン、ヒートテックの下着 靴はスニーカーではなく革靴(雨に備えて)

   サングラス つばの広い帽子 部屋着 携帯イス サンダル 酔い止め

スケジュール

2013.05.03  20:20頃:  神奈川県久里浜港出港

2013.05.04  05:00:  鹿嶋市沖 26km

2013.05.04  12:00:  相馬市沖 30km

2013.05.04  15:00:  女川町沖 20km

2013.05.05 04:37: 函館 恵山岬 東 53km

2013.05.05 12:00: 十勝 南東 36km

2013.05.05 15:00: 釧路町 円山 南  22km

2013.05.05 18:04 落石岬 南南東 8.6km




えとぴりか

所属:独立行政法人北方領土問題対策協会(たぶん)

総トン数:1,124トン

長さ:66m

幅:13m

速力:15ノット

搭載人員:96名(旅客84名)

いよいよ乗船!!

浦賀の先にある久里浜はペリーが上陸したところだそうで
このような機会でもない限り、訪れる事はなかったでしょう。

当初は大洗港から出る予定だったのですが
港の整備の関係から久里浜に変更になりました。
この出発地の変更で行程的に厳しいところが出るのではないかと
少し心配です。

5月3日に一日クルーズが行われ、終了後に私たちの乗船となります。
ライトに照らされたエトピリカ煙突が良く目立ち、なかなかきれいな船です。
ワクワク感が高まっていき、今や遅しと乗船を待ちます。





部屋

のっけから、見苦しい画像となりましたが
もっとも安い8人部屋です。

ただ、荷物を入れるスペースは十分あり、助かりました。

それにしても部屋が暑く、温度の調整は個々にはできないようで
次に日からはドアを開放して寝ることにしました。
やはり、根室港ベースの船なので、この程度の室温は当たり前なのでしょう。
そういえば、以前行った霧多布の宿は6月でもストーブが焚いてあった事を
思い出しました。







5月4日

4F デッキ

4:30が日の出の時刻で観察の開始時刻です。

海は凪できれいな青空が広がっています。
ただ、多少しけた方が海鳥の出は良くなるのですが。

4Fと5Fが観察に使われるデッキで初日は風が強く
5Fには上がる事ができなかった。
順光となる左舷デッキで観察を始めます。
この船はデッキ上に雨を防ぐ構造がないので雨天の観察は厳しい。
航行中には雨が降る事がなかったので助かりました。




クロアシアホウドリ

今までに何度か見ているので感動はあまりありませんが
ダイナミックな飛行は、それだけでも他を圧倒する存在感があります。

アホウドリの幼鳥とよく似ていますので
遠くでは区別がつかない事が多いようです。
今回、私も間違えました。





オーストンウミツバメ

ガイドの方の”オーストン”の声で集中力が高まります。

以前見たのは、はるかかなたで何か飛んでいる程度だったので
鳥の近さが際立っています。この船ならではの景色です。

ウミツバメは海が荒れないと出てこないと思っていたので
ほとんど諦めていたのですが、思わぬ出会いでした。





アカアシミズナギドリ

ミズナギドリの仲間のうちでは比較的わかりやすい種類ではないでしょうか
全体的に大きく、羽ばたきがゆっくりしていて、嘴と脚のうすいピンク色が
良く目立ちます。この時期は、かなりの割合で羽の抜け落ちた個体が多かった。


船内 案内図



食堂・集会所

十分な広さを持った食堂で全員そろっての食事が可能
コンセントが多く、パソコン作業には有難かった。

ちなみに、私は鳥旅にはノート型を持って行っています。
その日の画像を取り込み、ついでに外付けハードディスクに保存
わりあい退屈な夜の時間が有意義に過ごす事ができます。

かなり重くなるのは大変ですが移動中の新幹線のなかでも利用。
また、日記もその日のうちに書くようにしています。





朝食

7時すぎに朝食 普段は全く朝、ご飯を食べる事がないのですが
なぜか、旅での朝食はたらふく食べてしまいます。
卵かけごはんならば軽く三膳はいけます。
食べ過ぎると悪いのはわかっていますが
いかの塩からは絶品です。

旅の途中の料理はデジカメに記録するのですが
今回は気が焦っていて、この朝食だけの画像となりました。





アホウドリ 亜成鳥

アホウドリ出現!!

このクルーズ以前に見たアホウドリは画像を拡大して、
それとわかる距離でしたが
今回は非常に近く、興奮しました。

頭から顔の部分の黄色もしっかり見えています。

アホウドリ 幼鳥

海上ではアホウドリ幼鳥が浮かんでいます。

遠くではクロアシアホウドリと見分けがつきにくいのですが
嘴のピンクが見えればわかりやすい。





トウゾクカモメ 暗色型

トウゾクカモメだ!!
この近さは素晴らしい。 残念なことに期待していたクロトウゾクと
シロハラトウゾクは見る事ができなかった。

ハイイロヒレアシシギ

すっかりきれいな夏羽になっています。
このときまでは、きれいなほうがオスだと思っていました。

地味な色合いの海鳥のなかではこの派手な色は貴重ですね。
もう一つのアカエリヒレアシシギは数羽しか見る事が
できませんでした。





アカエリヒレアシシギ

ほとんどがハイイロヒレアシシギで
そのなかに数羽、アカエリヒレアシシギが混じっている。


ハシボソミズナギドリ



ハシボソミズナギドリ

ハシボソとハイイロは良く似ていて見分けがつきにくい
説明では

@ 額がハシボソは切り立っていて、ハイイロはなだらか
  ただ、見る角度によってハイイロも切り立って見える事が多い。

A 嘴がハシボソは短く細い。ハイイロは長く太い。
  これも見る距離、角度によってわかりずらいことが多い。

B 翼下面がハシボソはすっきり見え、ハイイロは軸斑が目立つ。

C 翼の先端がハシボソはとがって見え、ハイイロはハシボソよりも尖っていない。

D 飛び方の違い。ハイイロはハシボソより羽ばたきが遅い。

それぞれの画像を比較して欲しい。
間違っていたら、ごめんなさい。





ハイイロミズナギドリ 

ハイイロミズナギドリ 

換羽中なのか羽が揃っていません。




オオミズナギドリ

もちろん、定番中の定番。オオミズナギドリも飛んでいます。

背中と翼上面のうろこ模様が良く目立ちます。

海鳥を本格的に見るようになる前は
この鳥くらいしか海鳥に出会う機会がなく、眺めているだけで
優雅な飛び方にうっとりしたものです。





着水前のコアホウドリ

アホウドリ科のなかで最も見る機会が多いコアホウドリは
私たちにとっても初めて見るアホウドリの仲間でした。
その時の興奮は今でも覚えています。

今度のクルーズでも何度もその姿を見せてくれましたが
最後のほうでは、もうカメラを向ける人も少なくなりました。

ピンクの足と水かきが見えています。

コアホウとクロアシのツーショット

こんな光景に出合うなんと思いませんでした。
まるで海鳥の図鑑のイラストのようです。

これにアホウが加われば、奇跡のシーンなのですが。





シロエリオオハム

南に住んでいる私たちはこの鳥の夏羽には会う事ができません。
近くでじっくり見たいものですね。




休憩室

利用する機会はなかったのですが
利用方法は多そうです。

見る限りでは、どの船室の窓も大きくありません。
せめて雨の時の観察に、大きな窓があったら便利なのですが





浴室

今回寒さはあまり感じなかったのですが冷え切った体には
お風呂は欠かせませんね。
有難い設備です。







5月5日

いよいよ待望の北海道南岸をめぐるコースです。
今日もべた凪状態で鳥の出が気になるとこです。

思っていたほど寒くはなく、レインコートを羽織った程度で大丈夫。
少し気になっていた海霧もありません。


5Fデッキ

風が収まったので5Fデッキも解放されました。

この階のほうが左右を見る事ができるので使いやすいと思います。

また、波やうねりの高いときは海面から低いところでは
鳥が波間に隠れてしまいますので、ある程度の高さが必要です。

しかしながら全く日射しをよけるところがありませんので
一日いたら、大変なことになりそうです。




マスコットのエトピリカを描いた煙突

絵だけで船名が分かるというのは大変便利です。
もっともバーダーほか少数のひとだけとは思いますが。

このユルキャラを作れば相当人気が出るかもしれませんね。





ハイイロウミツバメ

私たちにとって初めて出会う鳥です。
じっくり見たいと思っても一瞬で飛び去ってしまいます。
コアホウのように何度も出現すればよいのですが。


ウトウ

オレンジ色の嘴が良く目立ちます。

皆さんも私たちも、おそらく最大の目的はエトピリカでしょう。
そのため、浮いていたり飛んでいたりするウトウを丹念に探します。
体の下部まで黒いのが特徴だそうです。

最終的には見つけることはできませんでした。
あまり早く目的を達しても面白くないですから。(と負け惜しみ)




ウミスズメ

秋、冬、春とよく見る事ができます。
カンムリウミスズメを探したのですがいないようでした。


ハシブトウミガラス

ハシブトウミガラスの個体数が増えて、よく目にするようになりました。
嘴の下の白線が見えればハシブト

ただ、この白線が見えない事も多く夏羽では同定に苦労しそうです。


フルマカモメ 白色型と暗色型

見たいと思っていたフルマカモメの白色型が出現
暗色型ばかり見慣れている眼からはとても新鮮に見えます。

カモメと名が付いていますがミズナギドリの仲間です。


フルマカモメ 白色型

なかなかお目にかかれない白色型ですがかなりの
個体を見る事が出来ました。

翼以外は、ほとんどが真っ白です。

まるで小太りのカモメですね。




フルマカモメ 淡色型

体一面、グレーできれいな鳥。

淡色型のフルマも初めて見る事が出来ました。





フルマカモメ 暗色型

普段よく目にするのがこのタイプで
大きなくちばしが特徴です。




ヒメウ

顔の赤みが増してきています。
少し遠かったのが残念です。




ウトウの集団



ミツユビカモメ

いつもはかなり群れているミツユビカモメですが
今回はパラパラと現れる程度です。

特徴的な幼鳥は見られずじまいでした。




シロカモメ

九州に住んでいる者にとってシロカモメは
お目にかかる事はほとんどないと思います。
しっかり目に焼けつけます。

ワシカモメは飛んでいるところが見たいな


アジサシ

海上の漂流物にも目をむけるのも大事なようで

ちゃっかり、アジサシが休憩しています。





5月6日



いよいよ最終日で観察できるのも2時間足らずです。

深夜には根室港外に沖止めされ
これが良かったようで船の周辺にたくさんの鳥が行き来しています。
ここで半日見たらかなりの成果がありそうです。


ビロードキンクロ

4:35にISO4000で撮影しました。
北海道ではこの時間はもうかなり明るくなっています。

私たちにとっては初めて会う鳥で待ち焦がれていました。
次はもう少し明るいところでお会いしたいですね。

英名でWHITE-WINGED SCOTERとつけられているだけあって
遠くからでも翼鏡の白が良く目立ちますので同定がしやすいようです。




コオリガモ オス

個体数が多いようで、かなり目につきます。
図鑑に載っている冬羽、夏羽とはかなり印象が違います。

この時期は難しいのでしょうか?




一羽はチシマウガラスかな?

堤防で群れているヒメウとウミウ

右から二羽目は少し大きく、嘴も大きく見えていますが?




オジロワシ

上空から急降下!!

獲物はシロエリオオハムのようですが
残念ながら掴みきれず、落としてしまい
オオセグロに横取りされたようです。


ケイマフリ

個体数が少ないのか、あまり目にする事がなく、この個体は
まだ夏羽に変わってないようなのであまり目立ちません。

遠いうえに暗いと条件は最悪です。



コクガン

一度だけ出会ったコクガン

そういえばクルーズ中にはガンの姿はなかったみたい。




オジロワシ

最後の締めは
優雅に舞うオジロワシ
やはり、タタミですね



GPSの軌跡



このクルーズの航路図で
軌跡があるところが観察していたところ

おわりに

じゅうぶん満足できるクルーズとなりました。
特に大型フェリーでは味わえない鳥との距離の近さは迫力のあるものでした。
天候にも恵まれ雨に会う事もなく中断することなく鳥見ができました。

もう少し波があった方が鳥の出は良くなると思うのですが、そうすると船に弱い人は
大変なことになるわけで難しいところです。
欲を言えば、東北方面は見る機会が多いのですが道東は未知の世界です。
ここを重点に見てみたい気がしますが、根室はあまりにも遠く
できるなら苫小牧発着のクルーズをぜひとも企画していただければと考えています。

楽しく、驚きの鳥見ができました。エトピリカのスタッフの皆様、ガイドの方、クルーズに参加された方の
おかげです。ありがとうございました。


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